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今、新聞などの耐震偽装で話題の
構造2次設計・ルート2の詳細について 解説してみましょう

1.前文

これは高さ31m以下の特定建築物について行われる構造強度、耐震性の構造解析です。
姉歯の耐震強度偽装でも明らかになりましたが、構造計算が出来る設計士は(驚くほど少ない!)のですよ。

今回解説の構造力学は設計士でもわかる人は少ない?のですから、あくまでも皆様は深く理解しようとはせず、全体を何となくつかむようにして下さい。

2. 2次設計の前に

建物の強度は、イコール耐震性に比例します。建物に必要な強度は@長い年月に渡って使用し続ける上で必要な強度(主に荷重に関わるもの)とA地震などの短時間に集中して起こる外力に対して耐える必要な強度に分かれます。

@の主に固定荷重に左右される強度は、簡単に言えば構造の各部材強度や曲げ耐力、ひずみ程度が許容範囲にあることを確認すればよいことになります。

つまり各部材にかかる最大応力度を計算し、それが各部材がもつ強度「あらかじめ実験などにより確かめられた強度」の範囲内にあることを確認すれば足りるわけです。
これを
許容応力度計算 = 部材の強度、ひずみ範囲≦ 部材の許容応力度、許容ひずみ度 と言います。

以上を構造1次設計(ルート1)と言い、これは2次設計に入る前に基本的に総じて行うことになっています。
とりあえず知っておいていて下さい。

3.構造2次設計の全体の流れ

@外力の算出→A外力による建物の各階の横の歪みの確認(各階ごとの層間変形角≦1/200)
       B外力による建物の各階強度の偏差の確認(各階ごとの剛性率≧6/10)
       C外力による建物の各階のねじれ率の確認(各階ごとの偏心率≦15/100)

       D BCがNGの場合、各層ごとの強度の確認(但し、強地震に対して=B外力×5倍が条件
         となります。Qu ≧ Qun=Ds×Fes×Qud 保有水平耐力の確認)

4.各計算段階の詳細

@外力の算出

それでは地震力というのは、一体どうやって算出するのでしょうか。本来地震などは、波動なのでゆさゆさと揺する動的荷重ですから、加速動(1G=0.98m/sec2)を考慮したものとなりますが、それをあくまでも便宜上静的荷重=重量(W=mg)として扱います。

1に「Rt×Ai」・・・地面に一定の振動が起きた場合に建物に掛かる力は、地震の周期に対してその建物が持つ固有の周期にどのように反応=呼応するかが重要です。これを応答スペクトルと言い、T=2π√m/kを用いて計算します。
実際にはT=h(0.02+0.01α)の略算法を基本とし、高さ方向による影響、固さによる影響などを加味した計算を行います。
固有周期について詳しくは地震と建物の関係をご参照下さい。

2に「Co」・・・次に知っておいて頂くのは大地震と中地震の場合の地震力算出係数の違いについてです。係数とは、あくまでも便宜上、学者や有識者によって計算上で掛ける数字を決めたものです。これを標準せん断力係数と言います。ここでは、とりあえず単純に大地震が×1、中地震が×0.2と覚えておいて下さい。

3に「 Z 」・・・地域地震係数・・・これも上記同様いわゆる係数ですが、これは日本の各地域ごとの地震の発生率などを考慮した確率を係数化したようなものです。

以上、上記1×2×3=Z×Rt×Ai×Coが、地震力を計算する上でのまとめて1つの係数となります。これを地震層せん断力係数と言い、Ciとあらわします。

積載荷重を含めた建物の全荷重「Wi」にこの係数Ciを掛けたものWi×Ciが地震力となります。
これは4-@前書きでご説明したように、地震などの加速度荷重α2=2次関数を静的荷重α1=1次関数=比例と扱っている訳です。

例で言うと全重量100tの建物の場合、Z×Rt×Ai=1.0とすると中地震で20t、大地震で100tが掛かるというわけです。

A各部材の断面算定

「上記@外力の算出」で計算した外力がこれから各部材に流れる応力算定の全ての基本となります。
つまりこの数値を各階、各部材ごとに応力配分を行うわけです。その数値から必要な部材断面が決まります。

ここでは基本的な2つの法則についてだけご説明致します。

1に・・・それでは、各部材が負担する(按分する)応力はどのように決まるのでしょうか。
建築物を考える場合に、各柱や梁、床と言った部材は同じ外力を負担するのではなく、部材の強度に応じて負担することになるということを、まずは覚えてください。
つまり基本は、応力配分は各部材の強度=剛度に比例して配分されます。これを剛比と言います。

建築構造を最も単純化した柱と梁で出来た構造(ラーメン)を考えてみましょう。

上図のように梁でつながれた各柱は外力により当然変形量(傾き)は一緒になることが分かると思います。
自然に考えて固いものの方が変形しにくいですから以下のようなことが言えます。

変形量=ひずみδ=Q外力/K剛性  Q外力=K×δ

つまりひずみ量δは外力Qに比例し剛性Kに反比例する。力を大きくすれば変形量は増大し、部材剛性が高くなればひずみ量は減少する・・・わけです。当然ですね。

さて改めて注目したいのは、変形量が柱1及び柱2で同一ですからQ1/K1=Q2/K2となりK1:K2=2:1ですからQ1:Q2=2:1となり、それぞれの柱が負担する力=部材に発生する応力は柱1:柱2=2:1となることが分かります。
つまり、上説、部材が負担する応力配分は剛度に比例する=剛比となることが分かりましたか。

2に・・・次に部材の変形量はどのように計算するのでしょうか

今回は部材の断面性質の基本について触れてみます。詳しくは部材の断面設計を参照下さい。

梁などの部材の中心たわみ量を計算するのに、良く公式として使われる公式にδ=wl4/384EIというものがあります。これはたわみ量が荷重に比例、又は部材長さの4乗に比例し断面2次モーメントに反比例すると言うことを表しています。それではこの断面2次モーメント bh3/12 とはどんな意味があるのでしょう。

これは部材の曲げ強さをあらわす数式です。

 

断面2次モーメント の公式 bh3/12は実は断面の中立軸からの微小断面積(理論上、極限まで小さくした断面b・dy)にX軸からの距離yの2乗したものを全て合計する=積分するを単純数式に置き換えたものなのです。

つまり部材の断面がその位置において抵抗する度合い=仕事=力×距離に更に距離要素を加える=曲げに対する断面性能を2次関数により数値化したものなのです。

建築力学はアインシュタインの相対性理論のように光と時間、光と空間との関係と同様、数式化を基本として考えることが、とても重要です。この意味を理解していないと現実の建築に応用することは出来ません。

我々はアインシュタインのように公式を作り出すことは出来ませんが、公式に内在する意味を考える=理解することはとても重要なのです。

B層間変形角、剛性率の検討

ここまでくればあとはもう少しです。もうだいたい見えてきたと思いますが、そうです・・・各層の変形角は各層の剛性が正しく評価できれば 変形量=ひずみδ=Q外力/K剛性 に従って計算できるのです。

各層間の水平剛性KはS造であれば主に柱が、木造であれば耐力壁が負担します。各柱又は壁の水平剛性は

K=12EI/h3を用いて計算します。これはモールの定理から単純片持ち梁のたわみを計算する公式δ=PL3/3EIを利用して両端固定の単純柱の水平変位を求める公式に置き換えて導き出される公式です。
つまり両端固定の単純柱の剛性は高さの3乗に反比例し、前述 I=断面2次モーメントに比例します。
何となく感覚でお解かりになると思いますが、柱の水平剛性は前述部材断面の曲げ強さを示す断面2次モーメント に比例し=剛性が高くなる、逆に柱の断面性能上、高く=長くなるとたわみやすくなる、それは3次曲線を描く=長さに応じて急カーブ曲線を描く・・・わけです。

    
y=f(x)                     y=f(x2)                  y=f(x3)

又この際、D値法といって12EK0/h2で除して無名数化し、各柱の剛性を係数化=単純化して計算します。
各層の水平剛性は、この各柱、各壁の水平剛性を合計したものΣKとなるだけです。実数が必要なときには逆にこの12EK0/h2を乗じてやればよいわけです。

各層の層間変形角δ/hはひずみδ=Q外力/ΣKから算定します。δ/h≦1/200を確認します。
各層の剛性率 ある層のΣK÷各層のΣKの平均値≧0.6を確認します。

各階のねじり率=偏心率については任意の基準点からX、Yそれぞれの方向に全ての水平剛性×距離2の和を弾力半径の公式を使って求めます。


今回はさすがに保有水平耐力については省きます。繰り返しになりますが、今回はあくまでも皆様は個々を深く理解しようとはせず、全体の流れや意味を大きく理解するようにして下さい。

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