
勉強部屋・No.4熱損失係数q値について
家造りに関心のある方にとってはお待ちかねの熱損失係数についてです。
家の断熱性についてその性能を具体的に数値にして表してみようと言うことなのです。

@まずは伝熱についての基礎を学習します。
1.上図の温度境界層を見て下さい。このように固体(壁面)の表面と気体(空気)の間で行われる熱交換を熱伝達・αと言います。
つまり固体から流体へ、又はその逆の固体表面での対流と輻射の伝熱を統合したものを言います。単位はW/uK(kcal/u・h・℃)
2.熱伝導・λとは固体内での伝熱を言います。単位はW/mK(kcal/m・h・℃)
3.上記全てをセットにした気体から固体そして気体への一連の熱の流れを熱貫流・κと言います。単位はW/uK(kcal/u・h・℃)
1W=0.86kcal/h 1kcal/h=1.16W
A熱貫流率の求め方について
1.熱貫流率は熱伝達、熱伝導を総合して求めます。実際には熱貫流の逆数である熱貫流抵抗によって求めます。R=1/κ
これはそれぞれの伝熱抵抗の和として求められます。つまり熱伝達に対しては熱伝達抵抗1/αとなります。
但しここで注意をしなければならないのは熱伝導の逆数1/λは熱伝導比抵抗という厚みあたりの単位数値となっているので実際にはその厚みを掛けなければなりません。
単位はmとなっているのでoに直すことを忘れずに行って下さい。
熱貫流抵抗・Rt=1/K=1/αi+(l1/λ1+l2/λ2+l3/λ3+・・・ln/λn)+1/αo
以上が理解出来たら次は実際に一棟の家の熱損失係数・qについてご説明します。
B各部の熱貫流量・Qの和を床面積で割ったものです。
そして熱貫流量は熱貫流率・Kに実際の面積を掛けることによって求められるのです。

熱損失係数・q=(屋根+窓+壁+基礎+隙間のそれぞれの熱貫流量)÷吹き抜け等を含む床面積
以下は最近性能表示で行った実際の熱貫流率の算出式です。よく見て頂くと合板や断熱材の熱伝導抵抗が読めます。
◆大壁部
A-1外壁一般部
室内側熱伝達抵抗Ri=0.110u・K/W
室外側熱伝達抵抗Ro=0.040u・K/W
構造用合板9o熱伝導率0.16W/m・K/熱伝導抵抗
9.0÷0.160÷1000=0.057u・K/W
石膏ボート12.5o熱伝導率0.220W/m・K/熱伝導抵抗12.5÷0.220÷1000=0.057u・K/W
硬質ウレタンボート41o熱伝導率0.024W/m・K
/熱伝導抵抗41÷0.024÷1000=1.709u・K/W
熱貫流抵抗ΣR=Σ(Di/λi) 0.110+0.040+0.057+0.057+1.709=1.973
u・K/W
熱貫流率Kn=1/ΣR
1÷1.973=0.507 W/u・K
A-2外壁熱橋部
室内側熱伝達抵抗Ri=0.110u・K/W
室外側熱伝達抵抗Ro=0.040u・K/W
構造用合板9o熱伝導率0.16W/m・K/熱伝導抵抗
9.0÷0.160÷1000=0.057u・K/W
石膏ボート12.5o熱伝導率0.220W/m・K/熱伝導抵抗12.5÷0.220÷1000=0.057u・K/W
硬質ウレタンボート41o熱伝導率0.024W/m・K
/熱伝導抵抗41÷0.024÷1000=1.709u・K/W
柱・間柱120o熱伝導率0.120W/m・K
/熱伝導抵抗120÷0.120÷1000=1.0u・K/W
熱貫流抵抗ΣR=Σ(Di/λi) 0.110+0.040+0.057+0.057+1.709+1.0=2.973
u・K/W
熱貫流率Kn=1/ΣR
1÷2.973=0.337 W/u・K
●木造大壁熱橋面積比 一般部0.83/熱橋部0.17 熱橋係数β=1
平均熱貫流率KA=Σ(Kn×aHS) 0.507×0.83+0.337×0.17=0.479
W/u・K
実質熱貫流率K=Βi×KA
0.479×1.0=0.479
W/u・K
※通気層より外部は外気として断熱には算入しない
◆階間部
C-1胴差外壁一般部/熱橋部共通
室内側熱伝達抵抗Ri=0.110u・K/W
室外側熱伝達抵抗Ro=0.040u・K/W
構造用合板9o熱伝導率0.16W/m・K/熱伝導抵抗
9.0÷0.160÷1000=0.057u・K/W
梁木材120o熱伝導率0.120W/m・K/熱伝導抵抗120÷0.120÷1000=1.0u・K/W
硬質ウレタンボート41o熱伝導率0.024W/m・K
/熱伝導抵抗41÷0.024÷1000=1.709u・K/W
熱貫流抵抗ΣR=Σ(Di/λi) 0.110+0.040+0.057+1.0+1.709=2.916u・K/W
熱貫流率Kn=1/ΣR
1÷2.916=0.343 W/u・K
●木造熱橋面積比 一般部/熱橋部共通 熱橋係数β=1
平均熱貫流率KA=Σ(Kn×aHS)
実質熱貫流率K=Βi×KA
0.343×1.0=0.343
W/u・K
※通気層より外部は外気として断熱には算入しない
◆屋根部
D-1屋根一般部
室内側熱伝達抵抗Ri=0.090u・K/W
室外側熱伝達抵抗Ro=0.040u・K/W
野地合板12o熱伝導率0.12W/m・K/熱伝導抵抗
12.0÷0.120÷1000=0.10u・K/W
石膏ボート9.5o熱伝導率0.220W/m・K/熱伝導抵抗9.5÷0.220÷1000=0.044u・K/W
硬質ウレタン100o熱伝導率0.024W/m・K/熱伝導抵抗100÷0.024÷1000=4.167u・K/W
石綿スレート6.0o熱伝導率0.930W/m・K/熱伝導抵抗6.0÷0.930÷1000=0.007u・K/W
熱貫流抵抗ΣR=Σ(Di/λi) 0.090+0.040+0.10+0.044+4.167+0.007=4.448
u・K/W
熱貫流率Kn=1/ΣR
1÷4.448=0.225 W/u・K
D-2屋根熱橋部
室内側熱伝達抵抗Ri=0.090u・K/W
室外側熱伝達抵抗Ro=0.040u・K/W
野地合板12o熱伝導率0.12W/m・K/熱伝導抵抗
12.0÷0.120÷1000=0.10u・K/W
石膏ボート9.5o熱伝導率0.220W/m・K/熱伝導抵抗9.5÷0.220÷1000=0.044u・K/W
硬質ウレタン100o熱伝導率0.024W/m・K
/熱伝導抵抗100÷0.024÷1000=4.167u・K/W
垂木54.0o熱伝導率0.120W/m・K
/熱伝導抵抗54.0÷0.120÷1000=0.45u・K/W
石綿スレート6.0o熱伝導率0.930W/m・K/熱伝導抵抗6.0÷0.930÷1000=0.007u・K/W
熱貫流抵抗ΣR=Σ(Di/λi)0.090+0.040+0.10+0.044+4.167+0.45+0.007=4.898
u・K/W
熱貫流率Kn=1/ΣR
1÷4.898=0.205 W/u・K
●木造屋根熱橋面積比 一般部0.86/熱橋部0.14 熱橋係数β=1
平均熱貫流率KA=Σ(Kn×aHS) 0.225×0.86+0.205×0.14=0.223
W/u・K
実質熱貫流率K=Βi×KA
0.223×1.0=0.223
W/u・K
基礎断熱における熱貫流率の計算について
◆基礎部は少々難しいのです・・・関数電卓がないと出来ません。
又これから先は建築士においても必須の分野ではありません。ましてや皆さんには困難なので軽く眺めるだけにして下さい。
※注・但し最下欄の結論だけは重要です。 結論へ飛ぶ
土間床の定義…一般に土間床とは地盤から直接コンクリ等を打設し直に床を張る構造と床下を持ちながらも外気に通じる床裏を持たない構造の両者を総称して土間床と言います。
今回はベタ基礎により床下空間を持ちながらも外気との通気を遮断し基礎断熱を行う場合の床下及び基礎部分の熱貫流率を計算する。計算方法は以下の通りです。
外周部1m外の部分(総称して外周部という)=KL…外周部の熱貫流率
KL=1.46λ0.28e-B
B={〔0.63+0.16/λ〕+0.98(l0.1−lo0.1)}Rw0.32+(0.075+0.156λ)RF0.42
λ…土の熱伝導率[W/mK]l…基礎の深さ[m]lo…基準基礎深さ(lo=0.15)[m]
Rw…基礎断熱の熱抵抗値[uK/W]Rf…床下断熱の熱抵抗値[uK/W]
土間床等の中央部(外壁の壁芯から1mの床周辺部を除いた部分)=KF・・・土間中央部の熱貫流率
KF=0.21λe-C
C={0.157+0.19(l0.15−lo0.15)}RF0.3+0.2λRF
※
上記において土の熱伝導率λは厳密に言うと土質や含水率の関数であり設定が難しい。又基礎深さlは通常lo=0.45mの場合が多く,※
変化したとしてもそれ程大きく変化するものではない。そこでλ及びlを代表的な値λ=0.7[W/mK]/l=lo=0.45[m]に固定すると以下の式に簡略化出来る。
KL=1.32e-B
B=0.86Rw0.32+0.184RF0.42…水平部位断熱有り
KF=0.147e-C
C=0.157RF0.3+0.14RF
◆ 設定条件…次世代省エネルギー基準
W地域・外張工法における土間床等における外周部の外気に接する部分
必要熱抵抗値1.7u・K/W
硬質ウレタンフォーム熱伝導率0.024w/m・k
基礎断熱材厚さ…0.024×1.7×1000=40.8o=41oとなり
Rw=RF
=41÷0.024÷1000=1.71 B=0.86×1.710.32+0.184×1.710.42=1.2515
KL=1.32
e-1.25=0.378W/mK…土間周長部熱貫流率(床下有り)
C=0.157×1.710.3+0.14×1.71=0.4238
KF=0.147e-0.42=0.096
W/uK…土間中央部熱貫流率
結論
あとは上記のそれぞれの熱貫流率に面積(基礎周長は長さ)を掛けたものの合計に隙間による熱損失を加え、
吹き抜けを加算した実質床面積で割るとこの家の熱損失係数・q値が出ます。
実際にこの家の熱損失係数・q値は2.075、温熱等級は等級4です。
まずは設計上のお話ですが、実際のお話でもありますので簡単にご説明をすると・・・
この家の断熱性能は驚異的です。
外気温との差にもよるので例えるのがとても難しいのですが、関東の埼玉東部地区程度で40坪弱の家を玄関からトイレに至る隅々まで家一棟まるごと暖房して24時間に渡り温度管理しても電気代で1万円弱でいけると言うことです。
これは、魔法瓶のように高い断熱性能であれば、暖房など、実際に屋外に放熱する熱損失は、一般住宅に比べ格段に少なく、必要な熱エネルギーは、驚くほど少なくて済むという事を言いあらわしています。
つまり暖房なら一日中可動する必要は無く、実質の可動時間は極めて少なくて済みます。
又冷房も同様に短時間で効果が現れますので短時間で微運転に移行出来ます。
後は維持に必要な最小限の運転で快適に過ごすことが可能です。
つまり、大きな吹き抜けを造り、とても広いリビングダイニングを造っても暖房は
、マイルド暖房の床暖房や温水パネルによるものだけで
十分可能なのです。
しかし本来、床暖房などは補助暖房と言って、主暖房にはなりません。
それは本来、家の性能(断熱性能)が、まだまだ日本では充分では無いため、床暖房などの低温式では温まらないからです。
日本のほとんどのお宅で床暖房を主暖房にしている家は有りません。
低温でしかも輻射だけで暖房出来ると言うことのすごさはなかなか理解しにくいかもしれませんが、実はすごいことなのです。
ファンヒーターなど気流式のものは上下の温度差の問題やホコリ、又気流自体が人に与える不快感など、本当は様々な問題が指摘されており、
快適に過ごす空間には使えません。
廊下やトイレに行くだけで温度差を感じたり(ヒートショック)、窓から滝のように流れる結露、カビくさい不衛生で汚染された空気環境など・・・
視覚としての空間と、住まうべき空間の両輪がともに良くて初めて満足の出来る住まいとなると私は確信しています。
私は断熱工法と上記数値的な根拠を添えてきちんとした裏付けのもとに結露の無い快適な住まい
の設計を行っています。
・ ・・家造りをお考えの方は一度我が家へ来てみませんか。
さいたまの設計事務所 Hiro 空創舎 一級建築士事務所 皆様のお問い合わせを心よりお待ち申し上げております。 |